治療経過と瞑眩

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体質改善を念頭において、漢方治療を実施する場合は、それなりの期間を必要とします。特に、体力のない人や長い病悩歴のある人は、年余にわたり服用を継続することが大切です。
また、漢方薬を服用した際の反応は一人ひとり違い、千差万別です。時には瞑眩(めんげん)と言って、思いがけない反応が起きることもあります。
ここでは、症状から見た生薬や漢方薬の効き方を、ご説明します。



症状が悪くなったとき
漢方薬をのんだとき、思いがけず悪くなる時があります。
悪くなったときは、副作用、瞑眩(めんげん)、それ以外のときに分けて考えます。
特に、治りたいと強く思っている症状が悪化したときはショックです。(たとえば、アトピー性皮膚炎の人が、服用直後に皮膚症状がひどくなってしまったなど)
あるいは、随分前に治癒していたはずの、全く忘れていた病状が、突然ぶり返すことがあります。
こういう場合は、一度服用を中断して様子を見ます。
漢方薬だからといって、副作用がないわけでは決してありません。また、瞑眩といって、体が漢方薬に反応し始めたと考えていい場合があります。この区別を判断することは、なかなか難しいことがあります。
また、日々の生活に問題がある場合があります。
全然変化がないとき
全然変化がない時があります。このような場合でも、体の内側では変化が始まっていると考えて、服用を続けます。
漢方薬によっては、長期に服用して初めて効果を実感するものもあります。何となくだけれどもそれなりにいい、そういえば風邪を引きにくくなったなどという場合もあります。あるいは、それ自身でははっきりした効果を感じることができなくても、他の漢方薬の効力を高めていることがあります。
時には、案外気がつきにくいことが改善されていることも、少なくはありません。
たとえば、アトピーで二回目に受診した人の場合;
「漢方薬をのんで、いかがですか?」−「全然よくなりません」
「それでは皮膚症状以外で、何か気がついたことはありませんか?」−「そう言えば、便通が良くなりました」
体質を目標に服用を続ける場合は、このように、来院のきっかけとなった主症状以外の、さまざまな体調の変化が大切な所見となります。
服用し始めにすぐに良くなったとき、一度良くなってまた悪くなったとき、主症状以外の状態が改善されたときなど
症状の推移は、個人個人皆異なるとともに、時期によっても経過が異なります。
人によっては、服用し始めたらすぐに良くなることがあります。一旦良くなっても、また悪くなることがあります。
先に述べたように、主症状以外の状態が改善されるときもあります。たとえば、胃腸症状のために服用を開始したところ、尿の出が良くなった、良く眠れたなどということが起こったりします。逆に途中から発疹が生じる、このようなこともあります。
時には、このところ効いているのかどうか全然分からない。もう止めてもいいのではないかと思う。このような時期が、必ずといっていいほど表れて来ます。
いずれの場合であっても、体質が改善される過程における反応や変化だと受け止めて、服用を続けていきます。一進一退を繰り返しているように見えます。
このような経過を辿り、しだいにより良く改善されていき、安定した状態に移行していきます。

 以上のような経過については、次のように考えることができます。
 現代医薬品は単一の成分を含んでいます。たとえば、痛みに対しては、痛みを解消する作用を持つ、特定の一種類の成分(アスピリンなど)を含んだ鎮痛剤を使います。
 これに対して、生薬や漢方薬は多種類の成分を含んでいます。そのために、各種の症状に効果を示すことが考えられます。
 また、漢方医学的には、単に症状を改善するだけではなく、症状の原因となる病態に効力を発揮すると考えることができます。その結果、病態が改善される過程で、目標となる症状以外の関連する症状が軽減したり、逆に瞑眩という反応が起きます。
 病態の複雑さから来る反応の変化、あるいは気血水システムの浅い部分に対する反応、深い部分に対する反応などの差もあるでしょう。
 また体の微妙な変化に対する感受性(自覚的な感覚)は、その時々の体調や生活状況に影響を受けるとともに、個人差があるようにも見受けられます。
 漢方診療の治療経過は、ほとんどが自覚症状によって判断されますので、紛らわしいことも少なくありません。
 
 このように、生薬や漢方薬に対する反応は、各自まちまちです。また、服薬して初めて分かることが殆どです。
 特に皮膚疾患は、皮膚を強く掻き壊してしまうと、漢方治療の効果が半減したり、経過が分からなくなることがあります。ご注意ください。




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