適応症状

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 漢方薬は臨床の場で様々に活用されています。
 ここでは主として当院で行っている、体質改善に重点を置いた適応について説明致します。
 各種の不定愁訴、体調不良など体質が劣化した、未病と呼ばれる病状が、漢方診療の良い適応となります。

 未病とは、自分の本来持っている体力や気力が、限度を越えて失われつつある姿です。
 ただ未病という診断名はありませんので、心身症、自律神経失調症などと診断されたり、不眠やいろいろな不定愁訴などのために体調を崩している場合も少なくありません。あるいは単なる冷え性や便秘や生理痛であったりします。あるいは、アトピーなどが慢性に経過して、なかなか改善しない背景であったりします。

 特に、現代のように、パソコンで長時間仕事に没頭することが多くなると、目を酷使しつつ行う頭脳労働が主体となります。これは筋肉労働と同じかそれ以上に、ある意味でパワーを消費すると考えられ、長い間には、体力や気力がしだいに消耗していきます。これは、生まれつき体力が少ない人にとっては大きな問題です。

 漢方診療では、このような過労などから生じた体力の低下、体調の乱れなどの体質(後天の体質)を改善していきます。
 また生まれつき虚弱な小児の体質(生まれた後の後天の体質)や、元々体力が少ないと考えられる人の体質が徐々に改善されていくことが、経験的に知られています。
 なお生まれつきの体質、たとえばアレルギー体質そのものを、ピンポイント的に解消することはできません。症状を軽減できることもありますが、生来持って生まれた、特定の体質そのもの(先天の体質)が消えてなくなってしまうわけではありません。

 体質改善によって症状が軽減されることに関しては、次のような事柄が考えられます。

『体質が改善されることによって、体質の劣化に伴って生じていた、いろいろな症状が良くなっていく。その過程で、受診のきっかけとなった主症状も軽快していく。不定愁訴など、気血水の異常に原因を求めることができる場合であれば、漢方薬を服用することによって、体質が改善され、症状がしだいに軽減していく。
病悩期間の長短を問わず、一時的に体質が劣化した状況で服薬を開始した場合は、元の健全な状況に回復した段階で、服薬を完了できる。しかし、本来の体力が少なくて、生来体質上の問題を抱えている場合は、症状から完全に解放されたとしても、何らかの形で、引き続き服薬を継続する必要がある。』


  詳細は、漢方コラムをご参照下さい。

体質の改善を目標にして行う、漢方診療の適応の目安

・胃弱、食欲不振、便秘、下痢、過敏性腸症候群などの胃腸症状
・冷え性、低血圧、むくみ
・皮膚症状、喘息、鼻炎など(アトピーなどのアレルギーによるものも含む)
・頭痛、肩こり、腰痛、筋肉痛、こむらがえり
・生理不順や生理痛、月経前症候群(PMS)など、月経に関する諸症状、更年期障害
・排尿異常、動悸、つかえ感、自律神経失調症やその他の慢性に経過する諸症状
・日頃から、何となくではあるけれども感じている疲れやすさ、だるさ、体力不足や体の不調など



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代表的な症状や疾患

HOME適応症状>代表的な症状や疾患

代表的な症状や疾患について説明します。
症状によって多少異なってきますが、基本的には、体質を改善することを目標に治療いたします。


胃弱・下痢・過敏性腸症候群
便秘
皮膚疾患・アトピー性皮膚炎
肩こり・疲労・不眠
生理不順・月経困難症・PMS
自律神経失調症・心身症
ドライアイなどの不定愁訴



胃弱・下痢・過敏性腸症候群
  いわゆる虚証と呼ばれる病態であり、典型的な漢方の適応です。
 現代医薬品の開発が進んできた分野ですが、特に治りにくい場合は、基本的な体力を付けていくことを目標に置いて、漢方薬や生薬を服用していきます。
 特に、生まれつきの体力が少ないと考えられる場合は、症状が改善したように見えても、悪化することも少なくありません。
 また服用の始めは、効いているのかどうかが判断しにくいことがあります。このような場合でも、気長に服用を続けていくことによって、しだいに安定してきます。
 また、日頃の生活に注意することも大切です。


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便秘
 便通は、日々の生活の状況によって、大きく影響を受けます。ですから、誰でも便通が良かったり、悪かったりすることを経験します。
 ただ、1週間に1回などと極端な場合は、改善する必要があります。
 また、何となく体調がすぐれないなどの原因となっていることがあります。
 便通をつけるだけであれば、いわゆる下剤を使えばいいわけですが、虚証といって、基本となる体力が低下している場合は、虚証の治療を行うことによって改善していきます。
 比較的早く、便秘が軽快した時であっても、体力がつくまでは、服用を続けることが大切です。
 体力がある場合は、便通の改善を図ると共に、気血水の流れを整えます。
 なお、大腸がんなどの、重大な疾患が潜んでないとも限らないため、現代医学による検査が、まず必要であることは言うまでもありません。

皮膚疾患・アトピー性皮膚炎
 慢性に経過している皮膚疾患では、気血水の流れが大きく欝帯しています。特に、患部では著明な気滞や血(おけつ)、水滞が潜在しているものと考えて、強力に気血水の流れを整えていきます。
 また、虚証のケースでは、体のより内側からの漢方治療が必要となってきます。併行して、皮膚科的な治療も欠かせません。
 皮膚疾患の場合は、掻き壊すことが多く、治療効果がはっきりしないこともあります。
 症状がひどい場合は、漢方薬によって、体調を整えながら、体力をつけることを目標に置くことが大切です。皮膚症状もさることながら、全身の状況の変化に注目しなければ、治療効果があがっていきません。

肩こり・疲労・不眠
 体力の有無に関わらず、日常生活で絶えず起き得る症状です。
 漢方診療の立場からは、気血水の流れに欝帯があると判断して、これらの流れが改善されるような生薬や漢方薬を処方します。
 最近、特に疲れやすくなったという場合は、基本的な体力の低下があると考えられ、虚証に準じた治療が必要となってきます。

生理不順・月経困難症
 気血水のうち、特に血の流れが滞っており、これらの流れを改善する治療を行います。また冷え性やむくみがある場合は、水にも異常が発生していると考えて、血と水を同時に治療します。
 また、このような場合でも、虚証であれば、虚証に対する治療を行います。

自律神経失調症・心身症
 病院などの検査ではっきりした診断が付かず、このような病名がつくことがあります。現代医学的には正しい病名であっても、現代医学的な治療がうまくいかないときがあります。
 漢方医学的には、基本的な体力が低下している状態です。体質改善を目標にして、漢方治療を行うことによって、症状が軽減する場合が少なくありません。

ドライアイなどの不定愁訴
 ドライアイといえばパソコンを思い浮かべますが、長時間パソコン作業に従事すれば、ドライアイ以外にも、いろいろな症状がでてきます。
 前項のような、肩こり、不眠、疲労等の他、背部痛、肌あれ、便秘など、漢方医学的に見れば、陰陽のバランスが崩れかけた時の症状が出て来ます。気と血が大きく滞った状態です。したがって、気血の流れを改善する漢方薬や生薬を処方します。
 また、何時間もパソコンに向かって集中していると、しまいには頭が硬直したように感じたり、立ち上がった時に、足腰が頼りなく感じたり、全身のパワーがダウンしたような感覚におちいることがあります。
 このような状況が長期に及ぶと、特に体力のない人では、疲労感が強くなったり、疲れからの回復が遅かったり、しだいに体力が低下してきたのではないかと感じるようになります。
 ストレス程ではないにしても、長時間の頭脳労働は基本的な体力を失う原因の一つです。




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